AI時代における科学の再創造と再構築
2025年10月23日ボストン発 科学的データおよびAI企業のTetraScience, Inc(テトラサイエンス、本社:米国マサチューセッツ州ボストン、以下 テトラサイエンス)は本日、武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下 武田薬品)を創設パートナーとして、新たな産業モデル「Scientific AI Lighthouse(SAIL)」プログラムを開始したことを発表しました。このプログラムは、AI時代におけるバイオ医薬品の研究開発および製造の進め方を変革するために設計された新しいモデルです。
SAILの創設パートナーである武田薬品は、テトラサイエンスが提供するデータおよびAIの全機能に最初にアクセスできる立場となります。これにより、AIを活用した創薬の加速、CMCプロセスの短縮、インシリコによるモデリングの推進、そして科学者の生産性向上が可能になります。このプログラムは、生産性を高め、候補化合物の品質を向上させることにより、バイオ医薬品企業がより低コストかつ低リスクで、より多くの製品を市場に投入できるように設計されています。
長年、製薬業界の研究開発における生産性は、極めて断片的なデータセット、属人的なワークフロー、手作業のプロセス、そしてスケールしにくい単発的なプロジェクト手法によって制約されてきました。テトラサイエンスのSAILモデルは、これらの課題に直接対応するためにAI時代向けに設計され、完全に統合された以下の機能群を提供します。
Scientific Data Foundry(サイエンティフィック・データ・ファウンドリー)
各ベンダーの独自システム環境に閉じられた科学データを、実験測定値やメタデータ、派生結果、機器テレメトリといった最小単位に分解します。これらのデータは、AIネイティブなスキーマ、分類体系(タクソノミー)、およびオントロジーに基づいて構造化され、再利用、継続的改善、分散共有を可能にする製品化されたデータ資産として構築されます。
これにより、電子実験ノート(ELN)、実験情報管理システム(LIMS)、計測機器、IoT、ロボティクスなどが急速に進化する環境の中でも、製薬データを将来にわたりベンダーロックインから保護し、コンプライアンスおよび監査対応能力を強化します。
Scientific Use Case Factory(サイエンティフィック・ユースケース・ファクトリー)
ファウンドリーから得られたAIネイティブデータを組み合わせ、標準化され、再現可能で、構成変更が可能なプロセスとして体系化することにより、AI対応のユースケースとワークフローを製品化し、大量に生成します。研究開発から製造にいたるバリューチェーン全体に共通する数百種類の科学的ユースケースが、SAILプログラムの一環として展開され、その後バイオ医薬品業界全体で広く利用可能になります。
Tetra AI(テトラAI)
研究開発のあらゆる段階における複雑で多段階のプロセスを支援するため、半自律型および完全自律型のエージェント機能を提供します。テトラAIは、多様な実験を横断して最も関連性の高いデータを能動的に特定・提示し、より広範な化学的および生物学的領域を探索し、手作業のワークフローでは見落とされるパターンを明らかにし、膨大な入力情報を並行して統合・分析することで、より迅速で確信度の高い意思決定を支援します。
Sciborgs(サイボーグス)
AI導入と業務変革を成功させるために、テトラサイエンスは科学・データ・AIの接点に立つ科学エンジニアチーム「Sciborgs(サイボーグス)」を製薬企業に派遣します。彼らは現場の研究チームと協働し、文化的・運用的な変革を促進し、サイエンティフィックAIの持続的な導入を支援します。
これらの要素が一体となって、自己強化型の価値創出ループを形成します。「ファウンドリー」で精緻化されたあらゆるデータセットは将来のワークフローの精度を高め、「ファクトリー」で開発された各ユースケースは学習結果を「テトラAI」にフィードバックし、新たなオントロジーは複数のワークフローや領域にわたって累積的に効果を発揮します。その結果、科学的イノベーションのフライホイール効果が生まれ、利用が増えるほどデータの品質が向上し、より高精度な洞察が得られ、それがさらに新しくより強力なユースケースの創出を可能にします。
武田薬品工業R&Dデータ・デジタル・テクノロジー部門責任者のNicole Glazer(ニコール・グレイザー)氏は、次のように述べています。「研究開発のバリューチェーン全体にAIとデジタル技術を組み込むことは、武田薬品の将来に向けた中核的な戦略領域の一つです。データ駆動型のR&Dアプローチにより、創薬期間を短縮し、標的の特定をより迅速に行い、より優れた治療候補の設計を可能にします。」
また、武田薬品工業 グローバル研究戦略・オペレーション統括責任者のJim Villa(ジム・ヴィラ)氏は「研究者が研究データにアクセスし、分析し、共有する方法を変革することで、生産性を新たなレベルへと引き上げ、AIを活用した洞察をオンラインでつながるデータ環境の中で実現しています」と述べています。「生産性の向上にとどまらず、データとエージェント型AIを活用して情報統合を迅速化し、新たな関連性を発見し、より優れた仮説を構築することで、創薬エンジン全体でイノベーションを加速しています。」
テトラサイエンス共同創業者兼CEOのPatrick Grady(パトリック・グレイディ)氏は、次のように述べています。 「製薬業界は長年、『イールーム(Eroom)の法則』(新薬開発コストが約9年ごとに倍増するという経験則)のもとで生産性の低下に苦しんできました。テトラサイエンスは、スケール化できない個別データプロジェクトや属人的なワークフローから脱却し、AIネイティブな科学データとAI対応ワークフローを製品化・産業化することで、このイールームの法則の曲線を反転させることを目指しています。これにより、創薬を加速し、開発サイクルを短縮し、科学が達成しうる領域を拡大できるのです。武田薬品とのSAILパートナーシップは、業界の未来を示すモデルケースです。」
TetraScience(テトラサイエンス)について
テトラサイエンスは、科学的データおよびAI企業です。弊社が提供するScientific Data Foundry(サイエンティフィック・データ・ファウンドリー)は、科学の原材料であるデータをAIネイティブな形式に変換し、Scientific Use Case Factory(サイエンティフィック・ユースケース・ファクトリー)は、研究開発および製造領域でのAI活用ワークフローを産業化します。テトラAIは、その両者を結びつけ、複雑なプロセスのナビゲーションや領域横断的な洞察を提供します。テトラサイエンスは、Insight Partners、Impetus Ventures、Underscore_VC、Alkeon Capitalなどの投資家から支援を受け、NVIDIA、Databricks、Snowflake、Microsoftなど世界を代表するバイオ医薬品企業およびグローバルパートナーから信頼を得ています。テトラサイエンスは、AI時代における科学の再構築を牽引しています。詳細は、tetrascience.comをご覧ください。